2025年の宮城知事選挙で初めて水道の民営化が進められていると意識しました。
しかし、実はもっと前から国は水道民営化を進めていた。
そして、今、さらにそれを進めているのです。
地方自治体が民営化の方向に進むことを断れない制度を整えて…
*************************************
今日はお水のお話なんですよね。
2027年度からあなたの町が古くなった下水道管を直そうとすると、国はお金を出す条件を1つ付けます。
その条件をほとんどの人はまだ知りません。
下水道管ってどこの町でも古くなっているんですよね。
なので直す工事は、これからどんどん増えていきます。
その工事に国がお金を出すのか出さないのかが、たった1つの条件で決まるようになるっていう話なんです。
しかもこの条件は、法律で決まったわけではないんです。
国会でもほとんど議論されていません。
これって工事の話に見えますよね。
でも、工事の話ではないんです。
誰があなたの町の水道を運営するのか、という話なんですよ。
最後にはこの計画を政府の会議で言い出した人の名前までいきます。
その人の会社が4年後に実際にその仕事を受け取っていました。
誰も法律を破らないまま、そこまで行くんですよね
ウォーターPPPという言葉が出てきます。
水道や下水道の管理を長い契約でまとめて、民間の会社に任せる。
国が今進めているやり方なんですね。
これが出てきたらその町の水道は、民間の会社が動かすようになります。
国民が知らない間に進む「水道民営化」
麻生太郎副総理(当時)「日本の水道は全部民営化する」と発言(2013年)
水道を民間の会社に任せる動きには、言い出した日がはっきり分かっています。
2013年4月19日、麻生太郎副総理がアメリカのワシントンで講演をしました。
場所は、CSISっていうアメリカの外交や安全保障を研究している団体の会場。
そこで麻生さんは「日本の水道は全部民営化します」って言いだしました。
この発言は質問主意書への政府の答弁という形で国会の記録にも残っています。
なぜか日本の国会ではなくって、アメリカの会場で先に言ったんです。
水道法改正 水道を民間の会社に運営してもらえるようにした(2018年)
そこから5年経った2018年12月。水道法が改正されました。
この改正で市や県が持っている水道を民間の会社に運営してもらえるようになったんです。
建物や水道管は役所のもののまま。
動かすところだけ会社に任せるっていうやり方なんです。
県で最初に始めた宮城県(2022年4月)
実際に始めた最初の県が宮城県なんです。
2022年4月から。
運営している会社の一番の株主がフランスのヴェオリアの系列会社なんです。
で、この動きは、単独で立ち行かなくなった小さい市から始まりました。
2018年 浜松市
2020年 高知県須崎市
(2022年 宮城県)
2023年 神奈川県三浦市、茨城県守谷市
ところが、2025年度から大阪市と愛知県が入ってきました。
2025年 大阪市、愛知県
国土交通省の資料では実際に始まっているのが10件。
今まさに会社を募集している最中のものがそれとは別に10件あります。
もう役所が公募を出して、手を挙げる会社を待っている新聞に載る前の段階です。
群馬県では3つの市と5つの町が水道をひとまとめにして、明電舎などが出資した会社に任せています。
熊本県の荒尾市は市の水道施設を全部メタウォーターなどが出資した会社に任せました。
国の目標:2031年までに225件の水道を民間の会社に運営してもらう
あくまでも任意だが、国の指針どおり進める地方自治体
そして国は、2031年度までに水道と下水道と工業用水道で合わせて225件という目標の数字を持っています。
水道を運営しているのは、それぞれ別の市や町や県なんです。
なのに、みんな同じことを決め始めているんですよね。
命令が出たのかというと、出ていないんです。
水道法の改正で決まったのは、「任せてもいい」というところまでなんですよ。
どこの市も断ろうと思えば断れます。
国は何も命じていないのに、全国の役所が同じことを決めているんですよ。
で、調べていったら、その理由が役所の書類の中に1行だけ書き足されていました。
法律でも国会の決定でもないたった1行なんですよね。
「任意」としながら実質断れない状況を作る国
国が汚水管の改築に交付金を出すのは、ウォーターPPP導入を決定済みの自治体のみ対象
そのウォーターPPP。国の書類にこう書いてあります。
『自治体が汚水管の改築を実施する場合、2027年度以降はウォーターPPPの導入を決定済みである場合のみを交付の対象とする。』
汚水管の改築というのは、古くなった下水道管を直す工事のことなんです。
交付というのは、国から市や町やお金を出すことです。
古くなった下水道管を直す工事に国がお金を出すのは、2027年度からはウォーターPPPを導入すると決めた市だけにします。
ウォーターPPPはうちの町の10年計画を探しても一度も出てこなかった言葉なんです。
つまり、うちの町は今までだと、2027年度からは下水道の工事に国のお金が出ません。
それと「決定済み」っていう言葉です。
「うちの市はやります」って発表するだけでは決定済みにはならないんです。
募集要項を公表して、会社の公募を実際に始めているっていうところまでいかないと、認められません。
後戻りできない所まで進んだ市にだけお金を出しますということなんですよね。
水道管も下水道管も高度経済成長の頃にまとめて埋められたので、だいたい50年から60年経っています。
漏れますし、道路も陥没します。直さないという選択はないんですよ。
でも人口が減って、水道料金の収入も減っているので、直すお金の出どころは国からの交付金ですよね。
その交付金に条件が付きました。
これ断れるかというと、形の上では断れます。
でも、実際には直す工事を諦めるという意味になるんですよ。
民営化することは最初から計画にあった!?
水道の経営をやるのは市町村と法律で制定…無理になったら、国がやるのではなく、民間へ
そもそも水道って、市や町がやるには大きすぎる事業なんですよね。
日本では「水道の経営は原則としてそれぞれの市町村がやる」って法律で決まっています。
人口5000人の町も100万人の市も、自分の水道を自分で経営します。
新幹線は国が主導して作るのに、命に一番近い水は一番小さい単位に任せてあるんですよね。
小さい町に大きな事業を背負わせれば、いつか無理が出るのは、最初から分かっています。
その無理が出た所に、民間に任せるやり方だけが用意されていて。
国が自分でやるという選択肢は表に出てこないんですよ。
国がやるのはお金の出し方を決める事だけです。
そして、お金の出し方を決められるところが、条件を付けられるんですよね。
国は一度も「民営化しなさい」って言っていません。
言ったのは、「お金を出す条件を変えます」ていうことだけなんです。
それだけで全国の役所が同じ方向へ動き出しました。
さっきの名前を並べた市や県も、どこも自分たちで決めたという記録が残るようになっているんですよ。
法律を変えず、役所の内部文書・交付要綱を書き換えて決まった交付金支給の条件
2023年PFI推進会議「2027年度からウォーターPPPを交付金支給の条件とする」
じゃあ、この条件を誰が決めたのかっていうと、日付があります。
2023年6月2日、PFI推進会議という会議。
そこで、PPP/PFI推進アクションプランへの令和5年改訂版というのが決まりました。
そこに2027年度から(ウォーターPPP=水道の運営を民間に任せることを)交付金の条件にするという方針が書き込まれています。
それを受けて国土交通省が交付要綱を書きかえました。
法律は変えていませんし、国会でも議論していません。
書きかえたのは、交付要綱という役所の内部の書類なんです。
法律を変えるとなると国会に法案が出て、新聞に載って、反対する議員も出てきます。
交付要綱の書き換えなら、そのどれも起きないんですよね。
2023年6月2日に何が決まったか覚えている人はほとんどいないと思います。
法律を通すより書類を1行書き換える方が早いし静かだし楽ですよね。
それで結果は同じところに着くんです。
効く方を選んだんだろうなって思うんですよ。
で、条件が始まるのが2027年度で、決定済みと認められるには公募まで行かないといけません。
公募の準備には普通1年から2年はかかります。
なので、今年と来年が締め切り前なんですよ。
今、全国の役所で駆け込みが起きています。
議会の予算書に調査の委託費として小さく載るくらいで、ニュースにはなりません。
国の計画…管理から運営する権利も民間へ
最初は管理から、いずれは全て民間へ
ここでもう一つ。コンセッションという言葉があるんです。
さっきのウォーターPPPは管理を任せるところまででしたよね。
コンセッションはその先で、運営する権利そのものを会社に売ります。
水道料金をいくらにするとか、どの水道管をいつ替えるとか、そういうことを会社が決めるようになるんですよ。
宮城県がやってるのがこれなんです。
国はまずウォーターPPPで管理を任せて、そこからコンセッションに進んでもらうっていう順番で考えています。
いきなり「売ります」って言ったら、反対されますよね、絶対。
竹中平蔵さんの影
民間議員として政府の会議に参加
それで225件という目標の数字なんですけど、あれを最初に言いだした人がいるんです。
竹中平蔵さんなんですよね。
2014年5月19日。
経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で、竹中さんが数値目標を出しました。
空港が6件、下水道が6件、有料道路が1件、そして水道が6件なんですね。
この時竹中さんはこの会議の民間議員でした。
それと同時にパソナグループの会長で、オリックスの社外取締役でもありました。
私がここで見たいのは、あの悪名高い竹中さんという人がどうこうではなくって、民間議員っていう決まりの方なんですよ。
政府の会議に民間から人を呼ぶのって、要するに、どこかの会社の人を呼ぶっていうことなんですよね。
つまり最初から、その仕事で儲かる会社の人がその仕事を増やす提案をするんですよ。
そして4年後の2018年の4月に。
さっきの浜松市の下水道が民間運営に切り替わりました。
その運営会社に出資していたのが、オリックスなんです。
誰も法律を破ってないんですよね。
民間議員は正式な決まりですし、入札も手続き通りなんです。
どこにも違法なところが無いのに、提案した人の会社が受け取っています。
菅義偉元内閣官房長官「導入に積極的な自治体を支援していく」(2018年)
政治で押した人もいるんです。
菅義偉さんなんですよ。
2018年の1月のコンセッションフォーラムで内閣官房長官として挨拶をして。
「導入に積極的な自治体を応援していく」って言いました。
同じ壇上に竹中(平蔵)さんもいたんですね。
官房長官の応援って、命令ではないんですよ。
でも役所の人には命令よりも効くんですよね。
2014年に内閣人事局っていうところができて、省庁の幹部の人事は官邸が決めるようになりました。
その官邸の中心にいたのが、官房長官の菅さんなんです。
自分の人事を握っている人が応援していることに反対する役人はそうそういませんよね。
命令ならどの法律ですかって聞けますし、断る手続きもあります。
応援にはその手続きがもうそもそもないんですよね。
ウォータPPPを行う民間企業
10年契約で安定した利益…いつどの機械を入れかえるかも企業が決める
実際に受け取っている会社の名前を並べますね。
宮城県はさっき話したフランスのヴェオリアです。
浜松市はオリックスが出資しています。
群馬の3市5町を受けもっている会社には、明電舎が出資して。
熊本県荒尾市はメタウォーターです。それとなぜかクボタも入っているんですよ。
農機具の会社だと思っている人が多いと思うんですけど、水道管を作っている大手なんですね、実は。
明電舎もメタウォーターもクボタも、元々役所に機械や水道管を売ってきた会社なんですよ。
市が発注して納品して代金をもらって、それで終わりだったんですね。
それが運営を任されると、10年契約で毎年決まったお金が入ってきて、しかもいつどの機械を入れ替えるかを自分たちで決められるんですね。
自分で売った機械を自分で交換時期を決めて、自分で入れ替えるんですよ。
売りきりだった商売が毎年お金の入る商売に変わったんですね。
いわゆるサブスクですよね。
水道は日本中の全部の町にあって、絶対になくなったりしません。
この計画の弱い所…受け取る会社が足りない
水道の運営は24時間体制
国は「民営化しろ」とは言いません。
お金を出す条件を変えるだけなんです。
それだけで全国の役所が同じ方向へ動き出します。
ただ、この計画で1つだけ弱いところがあるんですよ。
受け取る会社が足りないんです。
225件に届くには、年に30件以上のペースが要ります。
今までは年に10件くらいなので、もうこれって3倍何ですよね。
業界の中からもそんなに増やせないっていう声も出ています。
水道の運営って、24時間止められない仕事なんですよ。
夜中に水道管が破れたら、その時間に人が出ていきますし、水質の検査も毎日あります。
それを10年、その街でやり続けられる人をそろえないといけません。
機械を売るのとはまるで違う商売なんですね。
しかも、その人手が今の日本にはありません。
条件があるから市は導入すると決めます。
決めたけれど、手を挙げる会社が来ません。
来ても1社だけで比べる相手がいないまま契約することになるんです。
そうなると、値段を決めるのは会社なんですよ。
急いで進めた結果、受け取る会社が育っていなくて選ぶことも出来ません。
この計画、その辺から詰まると私は思っているんですよね。
自分の町の役所のホームページで確認を
そして皆さんも、自分の町の役所のホームページを見てみてください。
水道の経営戦略とかそういう名前の書類が置いてあります。
10年分の計画が誰でも読めるように出ています。
その中にウォーターPPPとか民間とか広域化とかそういう言葉が入っているかどうかを確かめてみてください。
入っていたらあなたの町でも民間に任せる話が文章の上ではもう始まっているんです。
今日ずっと見てきたのは順番です。
タダの水に値段が付いて、町だけでは無理になって、そこに民間の会社が来ます。
この順番はうちの町でも京都でも同じでした。
ただ、会社が売ったり買ったりできるのは、水道管とポンプとそれを動かす仕事だけなんですよ。
水そのものは誰にも買えません。
雨は誰の許可も取らずに降りますよね。
地面に染みて、千年かけて京都の地下にたまって、そしてまた川から海へ戻っていきます。
この巡りに契約書も運営権もありません。
2016年も2027年もあの水には関係ないんです。
そして、人の体の6割は水ですよね。
運営権を誰にも売れないものが、今この瞬間あなたの体の中を巡っています。
飲んだ水が巡ってまた出ていきます。
あなたの体の中を巡っている水と京都の地下にたまっているお水は同じものなんです。
2027年度のカレンダーで動いている計画があります。
千年かけて巡っている水もあります。
順番はいつも人間の都合で進んでいるんですね。
でも、水のめぐりはその順番が始まるずっと前から続いていて、順番が終わった後も続いていきます。
私たちの体は毎日そちらのめぐりと一緒に動いているんですよね。
どちらの視点に立って今日のニュースを見るか、それは選べるんです。

コメント