【ニュースの争点】最後の砦が決壊寸前…不平等な「食の日米貿易」の実態(2026年9月配信)【鈴木宣弘】

生のアメリカのジャガイモが日本のジャガイモを全滅させる!

アメリカのジャガイモにいる乾燥にも寒さにも強い害虫「シストセンチュウ」

司会者
「本日のニュースの争点は、東京大学大学院教授の鈴木宣弘先生をお迎えして、いよいよ大詰めを迎えているアメリカ産生食用ジャガイモの輸入解禁問題についてじっくりと伺ってまいります。
まず視聴者の方に向けて、アメリカ産生食用ジャガイモの輸入解禁をめぐって、今何が起きているのか、その基本的な状況を教えてください」

鈴木
「アメリカのジャガイモには悪いですね、害虫がいるということで、これが日本で蔓延すると、日本のジャガイモが全滅しかねないということで、大変な懸念・反対の声が生産者そして消費者にも広がってきているというのが今の現状だと思います。」

司会者「ありがとうございます。今回問題になっているのが、ジャガイモシストセンチュウという病害虫だと思うのですけども、具体的にどれほど危険なものなんでしょうか」

鈴木
「これに侵されますと、ジャガイモの生育が悪くなって、どんどんジャガイモが採れなくなってきます。
そして、このですね、シストセンチュウはシストというですね、殻のようなものを作って。
その中で卵が10年以上も乾燥にも寒さにも強く生き延びる
ということで。
1度これが侵入しますと、もうほとんどですね、それを完全に排除することができなくなるという問題があります。」

日本はアメリカの従属国

高市早苗政権で一気に進んだアメリカ産ジャガイモ全面輸入解禁

司会者「ありがとうございます。これまで日本はポテトチップス加工用などの限定的な形でしか輸入を認めてこなかったと聞くんですけれども、なぜ今全面解禁に向けて動き出しているのでしょうか。」

鈴木
「日本はですね、このアメリカの生のジャガイモだけは何とか輸入解禁を阻止したいということで、農水省も必死で抵抗してきたわけですよね。
だから、段階的にポテトチップス用の加工用のジャガイモとか、そういうものを少しずつ認めることで何とかしのごうとしてきた。
それがですね、今の政権になってなぜ一気に進むことになったかというと、今の政権が最もアメリカに従順な従属国としての日本の姿を体現していると。
だから、アメリカはチャンスだと考えていますよね。
それから、アメリカの中間選挙もありますから、そこへのその成果というか、そういうものとして位置づけようとしていることが考えられますね」

アメリカから突きつけられる要求事項

日本に拒否する権利はない…差し出す順番を決めることができるだけ

司会者「ありがとうございます。農水省の方では守ろうとしてきたという話があったと思うんですけど、そのあたりもう少し詳しくお話しいただけますか」

鈴木「農水省ではですね、植物防疫課長と。担当課長です。
これだけは絶対に止めなきゃいけないということで、「俺が体を張って許可しない」という風に抵抗しまして。それでなんとかその時は止められた。
でも、彼は飛ばされました。
そういう方が何人もいるんです。
そのことを私は農水省のOBから直接聞いています。これが実態です。
だから、私も農水省に15年いましたけどもね。本当につらいんですよ。

日本はアメリカからですね、たくさんの「これをやれ、あれをやれ」という要求事項。
山のように言われています
。
年次改革要望書とか。
それを最終的にですね、日本が拒否するという選択肢があるのかということですよ。
実はそれはほとんどないんですよね。
我々にできる事は、今年どれとどれを差し出すかという順番を決めるだけです。
それが日本の外交に許されている事です。
ですから、何とか止めたいと思えば、それを遅らせるために、色々小出しにしたりして抵抗するわけですよね。
それがですね、続けられてきたわけですが、ここで一気にね、まさに決壊するというか。
「ジャガイモよ、おまえもか」という私が呼んでいるような状態になったということですね。」

胃袋からの属国化…ついに最後の砦のジャガイモまで

司会者「そうすると、この生食用ジャガイモ解禁というのは、日本の食にとっては最後の砦のような立ち位置になるのでしょうか」

鈴木「そうです。もう長年アメリカからね、「胃袋からの属国化」だと言われて、どんどん農産物を生贄に差し出してきました。
最初は「米食うな」と。「アメリカの小麦を食え」と言われて、それがついに米も「アメリカの米を食え」とまで言われて。最後の砦の米まで来た。
そして米と共に、何とか踏ん張って抵抗してきたジャガイモが今回堤防決壊だということは、まさに象徴的な出来事だという風に思います。」

アメリカからのジャガイモに関する要求

司会者「こうして積み重ねられてきたアメリカと日本農水省との交渉について、もう少し詳しくお伺いしたいんですけれども。
防カビ剤の食品添加物への分類変更や遺伝子組み換えジャガイモの承認、冷凍フライドポテトの関税撤廃など、これまでのジャガイモについての段階的な情報についてもう少し詳しくお願いいたします」

鈴木「今回のシストセンチュウの問題だけではなくて、アメリカからですね、ジャガイモに関連して色んな要求があったわけですね。
それを汲み取って日本は対応してきてしまってる。」

①遺伝子組み換えのジャガイモの承認(2017年)

鈴木
「1つが遺伝子組み換えのジャガイモですね。
遺伝子組み換えのジャガイモについて、2017年にアメリカのシンプロット社が開発した2種類の遺伝子組み換えジャガイモを日本は承認させられたわけですね。
このジャガイモは「RNA干渉法」という手法で、RNAを用いて遺伝子の働きを止める技術なんですけども。
目的とする遺伝子の働きを止めるだけじゃなくて、他の遺伝子の働きも止めてしまうんじゃないかと。
ジャガイモ以外の生物の遺伝子の働きも止めてしまうんじゃないかと。
そんな可能性さえあるということで、様々な生物に劣化を起こすという問題も懸念されているものです。
こういうものをすでに2017年の段階で認めさせられました。
ですから今回の生食用のジャガイモの全面解禁になれば、こういう風な遺伝子組み換えのジャガイモが大量に入ってくる可能性。これも合わせて考えなきゃいけない。
そうしますと、スーパーで生で売る時には表示義務が発生しますが、多くが外食産業とかで使われるとすると、外食には表示義務がありませんので、日本の消費者で遺伝子組み換えのジャガイモは嫌だと思っている人でも、分からずに食べざるを得ないという状況になります。」

②ポストハーベスト(収穫後農薬)…食品添加物に分類し、残留基準を20倍に緩和(2020年)

鈴木
「それと、もう1つ付随して問題になったのが、ジャガイモを船で運んでくる時にかけるポストハーベスト農薬(収穫後農薬)。
これは日本では禁止です。
でも、アメリカから生のジャガイモをカビ生えずに運んでくるには、そのための殺菌剤ジフェノコナゾールをかけなきゃいけない。
「禁止になっていては困るだろう」ということで、日本側はこの殺菌剤をなんと運んでくる時にかけると、「食品添加物に分類してあげましょう」と。
しかも「残留基準値は20倍に緩和しておきますね」と。
こんなことまでやっちゃったわけですよ。
これがもう2020年に行われています。

これからですね、アメリカのジャガイモがさらに大量に入ってくれば、こういう風な禁止農薬の発がん性も一緒に我々はね、リスクにさらされるという状況です。
同じことはレモンでもね、1970年代にすでに起こってました。
禁止の防カビ剤がアメリカから運んでくるレモンにかけられているということで、日本はアメリカのレモンを海に捨てました。
でも、アメリカの逆鱗に触れて、「自動車止めるぞ」って言われたので、日本は「分かりました」と。
「これは運んでくる時にかけると、食品添加物に変わることにしておきます」。
ここまでして我々は認めてきたわけですよね。
同じことをまた繰り返しているわけですよ。」

③冷凍フライドポテト用の関税の関税撤廃(2021年)

鈴木
「さらには、ジャガイモの関税についても、冷凍フライドポテト用の関税は2021年に日米貿易協定においてこれを完全撤廃させられてます。
だから、ジャガイモを巡っても、シストセンチュウ以外に色んなことを段階的に認めさせられてきてると。
こういう歴史があります。

さらに遡れば、全てそうなんですよね。
牛肉・オレンジ交渉とかありましたよね。
牛肉・オレンジの自由化。
これも強く求められて、日本は抵抗しながら少しずつこれに対応させられたと。

我々農水省で本当に苦労したのは、そうやって何とか遅らせながらね、少しずつ対応していくということができても、最終的に全てやらされるということですよね。
それがいつの段階で来るかなんですよ。
ジャガイモはついに最終段階に入ったということかなと思います。」

司会者「実際にその男爵いもやメークインなどには、その害虫への対抗・抗体っていうのが少ないとも聞くんですけど、この辺りは本当なんでしょうか。」

鈴木
「確かに、そのシストセンチュウに強い品種の開発は行われていますが、ある意味いたちごっこなんですよ。
そういうものに対して、さらに抵抗力のあるシストセンチュウの類のものが出てきて、効果がなくなってくるというか、殲滅できないというね、そういう状況が繰り返されているんだと思います。」

アメリカは日本の農産物は輸入禁止…日本はアメリカの植民地

ジャガイモ、豚肉、さくらんぼ…日本の農作物は病害虫を理由に輸入せず

司会者「一方、アメリカでは日本の農作物について病害虫がいるという理由で輸入を禁止しているものが少なくないと聞くんですけど、この辺りについてもご解説をお願いします。」

鈴木「そうなんです。このジャガイモもね、ひどい話なんですよ。
実はアメリカは日本の生のジャガイモにはね、悪い病害虫がいるということで、全面的に輸入禁止。日本のジャガイモをシャットアウトしてるんですよ。
そうでありながら、日本には「自分のところのジャガイモはちゃんと買え」という、ものすごい圧力で要求してきているというね。この理不尽さですよね。
で、これが基本構造なんですよ。

例えば豚肉もね、日本の豚肉はアメリカはシャットアウトしている。
でも、日本はアメリカの豚肉は強く要求を受けて、自由貿易協定の交渉で(関税の)完全撤廃させられていますよ。
日本のさくらんぼはアメリカは買ってくれません。禁止してます。
アメリカのさくらんぼはチェリーは、アメリカの強い要求で日本は輸入を解禁させられました。
そういう関係がですね、まだまだあるわけです。
特に日本とアメリカの関係はそういうものですね。
豚肉、さくらんぼ以外にも、ブドウもメロンもネギも、全部日本の農産物はアメリカは買わない。シャットアウトしている
で、日本側だけがアメリカからの輸入は解禁、認めているわけですね。
で、ついにジャガイモも、今まではある意味両方認めていなかった。
でも、「アメリカのものは日本は買うんだぞ」と、また強硬に迫ってきたわけですから。


この基本構造はね、いかにある意味情けないというか。
日本がアメリカの属国であること、植民地であることの証左でもあると。
もうアメリカはジャイアンですよ。
ジャイアンに対して日本は何も言えないというね。この状態。
これがジャガイモでも起こっているということ。
この点の確認は私ももっと早くしておけばよかったんだけど、最近になって農水省に確認して、やっぱりそうだということが分かったんでね。
こういう点でも、いかに理不尽かということを我々は言っていかなきゃいかんないと思いますね」

国民の力でジャガイモを守ろう!

1000万人の署名募集中

司会者「こうしたジャガイモの問題というのは、生産者としても消費者としてもすごく大事、身近な話だと思うんですけれども。
これはもう止まることはないんでしょうか」

鈴木「そうなんですよ。今ね、生産者団体中心に、多くの反対の決議とか要請が上がっています。
しかし、基本的に、今話した流れで分かるように、これはもうね、日本側は認めるということで最終チェック体制に入っているわけですよ。
アメリカのその管理体制をチェックして、その上で承認するというね、それだけの手続きの段階に入っちゃってるということですから。
これを本当に止めるということは、非常に難しい状態だと。ある意味決まっちゃってるんだということね。
国は「何もまだ決定していない」という風な言い方をしていますが、そんなことはないと思います。
ただ、可能性があるのは、生産者だけじゃなくて国民ですよ。
消費者の皆さんがね、「こういうことで日本のジャガイモが食べられなくなったら大変だ」と。
アメリカのいろんなリスクのあるジャガイモしか食べられないような状況にさせられたら、「これはダメだ。食料安全保障から言ってもこれ以上やめてくれ」というような声が全国民的に広がれば、私は署名の効果というのはあまり今まで考えてはいなかったけれども、もしこのような形で消費者も巻き込んだ国民全体の署名が1000万人とか、例えばそのぐらい集まるようになったら、さすがに政権もですね、これは国民の声を無視したら、これからの政権運営や選挙にも影響するんじゃないか。
そのぐらいに政権が考えるぐらいの大きなうねりができれば、すくなくとも今回一気に解禁するということは遅らせると。
あるいはかなり先まで実質的に止めるということができる可能性はあると思うんですよ。
そこはまさに国民のみんなのね、その行動にかかっていると思いますので。
私が理事長を務めている食料安全保障推進財団で署名のサイトを立ち上げて、今皆さんに協力をお願いしているところですので。
もう既に12万超えるぐらいの署名は集まっていますが、まだまだね、国を動かすまでにはいってませんから。
こういうものを活用していろんな形でみんなの声を届けられればなと。」

司会者「最後にこうした断れない外交、日本の食の構造を変えていくために、何か日本にできる事、必要なことっていうのはあるんでしょうか。

鈴木「国政レベルでアメリカのこの理不尽な要求を突っぱねるということは、それをやるとやった方がね、消されてしまいますので。
非常に厳しい状況にはなっています。
ですので、まず私たちは自分たちの身近なところから。
仮にアメリカのそういうものが入ってきても、絶対に私たちは「国産の本物を守るんだ」ということで、自分の地域で採れたジャガイモや米や、そういう国産で安全安心な物を買い支え、自分もその生産に関わって「飢えるか植えるか運動」と言っていますが、「飢えない様にみんなで植えようじゃないか」と。みんなで作ってみんなで食べるローカル自給圏をみんなでつくることができれば、私たちはアメリカがいかにリスクのあるモノを売りつけようとしても、自分の地域のネットワークからはそれを排除することができると。
そのような自立独立の自給圏をみんなが各地で作ることができれば、日本全体の自立・独立が図れる。
そういう風な動きも門名で強化したいと思っています。」

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